お茶を楽しむ上で欠かせないさまざまな道具は、「茶道具」と総称されます。お茶をたてるための茶筅や茶碗、床の間を飾るアイテムなど、その種類は多岐にわたります。茶道では、これらの道具にこだわることが大切なおもてなしの一部とされています。特に、日本茶の味わいを引き立てる役割を果たすため、各道具の重要性を理解することは欠かせません。
この記事では、日本茶を更に美味しく、深く味わうために必要な茶道具とその役割について紹介します。初心者の方はもちろん、日常的に日本茶を楽しんでいる方にも、茶道具の多種多様な選択を再考する機会として、また新たな視点でお茶の楽しみ方を再発見するためのガイドとして、この記事が参考になれば幸いです。
日本茶を深く味わうための基本的な道具とその選び方
日本茶には多くの流派がありますが、一般的な家庭やオフィスで日本茶を日常的に楽しむ際には、それほど細かい違いにこだわる必要はありません。今回の記事では、家庭や職場で日本茶を美味しく楽しむために重要な基本的な道具について説明します。 以下に、日本茶を美味しく楽しむための主要な4つの道具と、それぞれの選び方について解説します。これらの詳細を一つひとつ確認しながら、お茶の時間をより豊かにしてみてください。
1.急須
急須は、茶葉とお湯を合わせ、お茶の風味を引き出すために使用されます。多くの種類があり、迷ったときは、使用感やお茶の種類に合わせて選ぶことがポイントです。
2.湯呑み茶碗
湯呑み茶碗は、日本茶を楽しむための茶碗です。多くの種類があり、素材や色、形状などにより、自分だけの湯呑み茶碗を選ぶことも日本茶の醍醐味の一つとなります。選び方によって、日本茶の味や香りの印象が変わります。
3.茶筒
茶筒は、茶葉を保管するための容器です。木製、金属製(ステンレス、銅、ブリキなど)、プラスチック製など、さまざまな素材のものがあり、保存性や利便性に基づいて選びます。特に金属製のものは、和紙が貼られているものが多く、異なる絵柄や和紙の手触りを楽しむことができます。
4.湯冷まし
湯冷ましは、お茶に使用する湯の温度を調節するための茶器です。特に日本の緑茶、特に玉露の場合、適温は60℃前後とされていますが、ティーポットややかんのお湯はそれよりも熱いため、湯冷ましを使用して適切な温度にします。急須より少し大きなサイズが使いやすく、口が広いものほど冷めるのが早いです。
急須の選び方
急須は多くの形状や素材が存在します。お好みに基づいて選べば、日本茶を十分に楽しむことができます。しかし、より快適なお茶の時間を求めるのであれば、使用する状況に応じた急須を選択すると良いでしょう。急須の選び方にはいくつかの要点がありますが、今回は「形」と「素材」の2つの視点から説明します。
形状で選ぶ
急須の形状は大きく分けて、横手型・後手型・上手型・宝瓶の4つに分けられます。それぞれの特徴を理解して、自分のニーズに適したものを選びましょう。 1.横手型
最も一般的な形状であり、特に日本独自の急須です。片手で扱いやすいサイズ感があり、お茶を注ぐ際には蓋を親指で押さえます。1~2人分のお茶を入れるのに適しており、様々な種類のお茶に対応できます。
2.後手型
中国で生まれた急須で、西洋のティーポットもこの形状をしています。注ぎ口と反対側に持ち手があり、多量の湯を注いでも安定して扱うことができます。中国茶や紅茶を入れるのに適しています。
3.上手型(土瓶型)
この型の急須は、持ち手が上部に配置されています。旅館や飲食店などでよく使われ、多人数に対応できる大きさが特徴です。持ち手には竹などの熱伝導性の低い素材が使われており、熱いお湯を扱っても安全です。熱湯で淹れるお茶、例えばほうじ茶や番茶などを楽しむのに適しています。
4.宝瓶(ほうひん)
宝瓶は持ち手のない急須で、本体を直接持って注ぎます。最後の一滴までしっかりと注ぐことが可能なため、お茶の風味を存分に感じることができます。低温でゆっくりとお茶の風味を引き出すお茶、例えば玉露やかぶせ茶、上級煎茶などに適しています。また、宝瓶に似た形状を持ちながらも背が低い「絞り出し」型の急須もあります。こちらは小型で片手で簡単に扱うことができます。
素材で選ぶ
急須の素材は主に3つのカテゴリー、つまり炻器(せっき)、磁器、陶器に分けることができます。それぞれの素材には独自のメリットがあり、自分の好みの質感やデザイン、そして素材の特性を考慮に入れて選んでみてください。1.炻器(せっき)
炻器は磁器と陶器の中間に位置する素材で、その特徴は多数の孔があることです。これらの孔がお茶の雑味を吸収し、美味しい成分だけをお湯に溶け出すための役割を果たします。代表的な炻器としては、常滑焼や萬古焼などがあります。
2.磁器
磁器は吸水性が無く、急須にお茶の匂いが移ることがありません。そのため、どんなお茶でもその本来の香りを楽しむことができます。国内で生産される磁器としては、九谷焼や有田焼などがあります。
3.陶器
陶器は素地が粗い粗陶器と細かい精陶器の2種類に大別されます。保湿性が高いことが特徴で、国内で生産される陶器としては、萩焼、益子焼、唐津焼などがあります。
湯呑み茶碗の選び方
湯呑み茶碗も急須と同様に様々な種類があり、それぞれ異なる特徴があります。急須の選択に加えて、湯呑みの選択にもこだわることで、お茶の時間を一層楽しむことができます。この項目では、形と素材に基づいて湯呑み茶碗の選び方を説明します。
形で選ぶ
湯呑みの形状は大まかに分けると、汲み出し茶碗と筒茶碗の2種類に分類できます。1.汲み出し茶碗
一般的にゲストの接待に使用されることが多い形状で、背が低く、飲み口が広くなっています。これにより、お茶の香りや色を十分に楽しむことができます。量が少なく、低温で飲むことが望ましいお茶、例えば玉露に最適です。
2.筒茶碗
名前が示す通り、筒形状をしており、縦長で容量が大きな湯呑み茶碗です。その形状のため中身が冷めにくいという特徴があります。大量に入れて高温で飲むお茶、例えば番茶やほうじ茶に適しています。
素材で選ぶ
使用状況を考慮に入れる場合、素材ごとの特性も重要な選択基準となります。特に、ゲストを招く際には、適切な素材の湯呑み茶碗を使用することで、好印象を与えることができます。
1.磁器
滑らかな手触りが特徴的な磁器は、薄いために熱が伝わりやすい素材です。そのため、低温で味わうお茶に適しています。また、白い器はお茶の色を楽しむのにも適しています。例えば、玉露や上級煎茶におすすめです。さらに、磁器は比較的壊れにくく、頑丈で長持ちするので、日常使用にも適しています。
2.陶器
磁器に比べて厚みがあり、熱が伝わりにくく、中身を保温する能力に優れています。熱衝撃に強く、大量に入れて高温で飲むお茶、例えば番茶やほうじ茶に最適です。しかし、吸水性が高いため、保存時にはカビが発生しないようにしっかりと乾燥させる必要があります。
3.ガラス
ガラス製の湯呑み茶碗は透明で清涼感のある印象を与える素材です。夏季に冷たい煎茶や冷茶を楽しむ際に最適です。透明なガラスは、暑い夏でも爽やかな印象を与えてくれます。最近では、耐熱ガラス製のものや、取っ手が付いたもの、ボトル型のものも増えてきており、熱いお茶にも適しています。
まとめ
湯呑み茶碗のデザインや素材にこだわることで、お茶の魅力をより深く味わい、楽しむことができます。ただ一つの茶道具にこだわるだけでも、日常生活が豊かになるでしょう。 さらに、急須も素材ごとに異なる特徴を持っているため、お茶の種類やシーンに応じて急須を選択するアプローチもおすすめです。本記事で説明した各素材の特長を参考に、日頃のお茶時間を一層楽しむ方法を探してみてください。